その6 ナット交換、調整ー2006.11.19ー

YAMAHA FG-251のナット接着面に隙間があり、弦の振動がネックにうまく伝わっていないようなので再接着することにしました。せっかくの機会ですので、新しいナットと交換することにして、ナットの調整も含めてレポートしてみたいと思います。


今回、ナット交換をするYAMAHA FG-251(1980年代製)です。1年ほど前に某オークションにて手に入れました。乾いた良い音がします。製造年代の割にはトップの日焼けも少なく外観上の状態は良好です。

問題のナットを外します。トラスロッドカバーを外してから、当て木をして指板方向からヘッド方向に軽くドライバーの柄などでたたくと外れるはずですが、このナットはなかなか力が必要でした。(理由は後ほど・・・)

今回取付けるナットです。牛骨にしようと思いましたが、溝堀りが面倒なので、プラスチックの半加工品を購入しました。お値段はなんと!驚くなかれ「105円」でした。

加工品とはいえもともとギブソンエレキギター「レスポール」用であったため、若干大きさと形状が異なっており、形成が必要でした。オリジナルのサイズと同じくなるようにこのような半円ヤスリや・・・

紙ヤスリなどを使って形成していきます。(マクロに強いデジタルカメラに買い替えたので指紋までくっきり写ってますね〜)

はい!完成です。番目の細かい紙ヤスリを使って小傷をとり、コンパウンドで磨いて艶を出せば完璧です。(今回はギターが年代物のため、ちょっとビンテージっぽく見えるようにコンパウンド処理は行いませんでした。)

取り外したオリジナルと2ショットです。溝は接着後に調整するため、この時点ではけずりません。半加工品のナットは調整用に浅めに溝が切ってあります。当然このままではローフレットの弦高が高くて弾きづらくなります。

さて、ナットを取り外した痕を観てみましょう。これではなかなかナットが外れない訳です。木工用ボンドがたっぷりと塗ってありました。木工用ボンドはタイトボンドなどと違い、硬化しても弾力があるため、楽器製作(修理)には向きませんね。弦の振動がその弾力で消されてしまってネックに伝わらないと思われます。写真にもあるとおり早速、彫刻刀でボンドを除去します。このとき、木部を削らないように注意が必要です。

木工用ボンドを除去した後の写真です。トラスロッドのメスネジが斜めになってます。本来は真直ぐに付いていたものがトラスロッドの回し過ぎで固定していた木材が破損しているようです。以前のナットが取れ、再接着されたのも、このメスネジがナットを押し上げたのが原因でしょうか?

トラスロッドを完全に緩めて、メスネジを戻るところまで戻してから手持ちの「パドック材」でプラグしました。(こういう補修はなるべく固い木材を使う必要があります。)接着はタイトボンドが硬化時間も短くて良いのですが、手持ちが無く「にかわ」を使いました。ちょっと指板との間に隙間が残りましたね。まあトラスロッドを限界以上に回さなければ割れることは無いので良いことにしましょう。

本当は以前の接着剤だけを除去すべきところなのですが、以前の修理で木部が平坦にされていなかったため、若干彫刻刀で整形しました。ナット幅もオリジナルとまったく同じ大きさで作ったにもかかわらず、化粧板にあたるので化粧板もほんのわずかですが彫刻刀で削りました。

ナットは面で接していれば、強力に接着されている必要はないため、木工用瞬間接着剤を数滴付けて指で圧着します。

バインディングが経年劣化により収縮しているため、端の方がぴったりになりませんが、指板やネックには面で接しております。

つづいて、弦高の調整です。なるべく低く、かつ解放で「ビビリ」がでないようにしないといけません。1フレットの頂点から弦の端までの距離が0.5mm以下になると強いピッキングで「ビビリ」ますので限りなくそれに近くなるようにします。(この数値は使用している弦のゲージやテンションで変わってくるので一概にはいえません。あくまでも私の使用している弦とこのギターでの話です。一般的には1フレットを押さえて、その弦の2フレット頂点から弦までの距離を測り、その数値まで解放で1フレット上の弦高を調整するらしいです。私の使用弦とこのギターではこの数値が0.5mmという訳です。)

若干の余裕を残して、ヤスリや100均の糸鋸、歯科用精密糸鋸などを使って溝を掘ります。弦が当たる頂点(いわゆる0フレット)は、指板側になるようにヤスリや糸鋸をヘッド側に傾けて削ります。(これを間違えてしまうと解放弦の音と押弦時の音のチューニングが合わなくなります。)専用のナットファイルというヤスリが販売されているのですが、このギターをオークションで落とした時と同じ位の値段がするので買えません(泣)。

すべて掘り終えたら、紙ヤスリを山折りにして、溝を滑らかに整えます。この写真では弦をすべて外してますが、本当は1つ1つ削ってはチューニングを合わせて1フレットの高さを測り、解放弦を弾いて「ビビリ」がないか確認しています。もし、削りすぎてビビったらもう一度振り出しにもどります。

今は販売されていないIbanezの「STRING INSTRUMENT GAUGE」です。このゲージの厚みが0.5mmなので、これが1フレット上にスムーズに入ればOKです。このゲージは優れもので、ちょっと写真に写っているのですが、12フレットの基準弦高がギターの種類によって黒い線で表されており、その線の範囲内に弦がくるようにトラスロッド調整やサドル調整をすると非常に短時間で弦高調整ができるというものです。再販してくれ〜。

はい!完成です。FもBフラットも軽いタッチで押さえることができます。弦高調整は難しい作業ではないのですが、削りすぎると面倒なことになりますので、ちょっと費用はかかりますが自信の無い方はショップにお願いするのが良いかもしれません。

この項終わり